雇用契約書を交わしていない会社でも退職代行は使えます。契約書がないことと辞められるかどうかは別の問題です。労働条件通知書との違い、契約書がないときに手元へ集めておきたい資料、依頼するときに伝える情報を順に解説します。
雇用契約書がなくても退職はできる
雇用契約は、書面がなくても口頭の合意で成立するとされています。実際に働いて給与を受け取っている以上、契約は存在しているという整理になります。したがって、契約書を交わしていないことを理由に退職できないということはありません。
期間の定めのない雇用契約であれば、民法上、退職の申し入れから一定期間の経過によって契約は終了するとされています。契約書がない場合、そもそも期間の定めがあるのかどうかも曖昧になりがちですが、月給制で継続的に働いているのであれば、期間の定めのない契約として扱われるのが通常です。
雇用契約書と労働条件通知書は別のもの
混同されやすいのですが、この二つは性質が違います。
| 雇用契約書 | 労働条件通知書 | |
|---|---|---|
| 性質 | 労使双方が署名する合意書 | 会社から労働者への一方的な通知 |
| 交付 | 法律上の義務ではない | 労働基準法により明示が義務づけられている |
| 内容 | 労働条件全般 | 賃金・労働時間・契約期間など所定の事項 |
労働基準法では、労働契約の締結にあたって賃金や労働時間などの労働条件を明示することが会社に義務づけられています。つまり、雇用契約書がないこと自体は違法とは限りませんが、労働条件を書面などで示していないのであれば、会社側の対応に問題がある可能性があります。
契約書がないときに手元で集めておきたいもの
退職代行に依頼する際、雇用条件がわからないと話が進みにくい場面があります。次のような資料があれば、雇用の実態を示す材料になります。
- 給与明細:勤務先の名称、賃金額、控除されている社会保険料などがわかります。もっとも有力な資料です。
- タイムカードやシフト表の写し:勤務日数と労働時間の記録になります。
- 雇用保険被保険者証・健康保険証:どの会社で加入しているかが確認できます。
- 採用時のメールやメッセージ:時給や勤務条件について書かれたやり取りがあれば残しておきます。
- 源泉徴収票:前年分があれば、雇用主と支払額の裏づけになります。
これらは退職後に会社から書類を受け取る際にも役立ちます。依頼前の準備については退職代行を使う前の準備リストにまとめています。
退職代行に依頼するときに伝える情報
契約書がない場合でも、次の情報が揃っていれば依頼は問題なく進みます。
- 会社の正式名称、所在地、代表者名、電話番号
- 直属の上司の氏名と役職
- 入社日(正確な日付がわからなければ、おおよその時期でも可)
- 雇用形態と勤務形態(正社員・アルバイト、週何日など)
- 希望する退職日と、有給の残日数がわかればその日数
- 貸与されているもの(制服、鍵、PC、社員証など)
入社日が曖昧な場合は、雇用保険の加入日から確認できることがあります。手続きの全体の流れは退職代行の利用の流れで解説しています。
契約書がない会社で起きやすいトラブル
退職日をめぐって主張が食い違う
就業規則も契約書もない場合、退職の予告期間について明確な取り決めがないことになります。民法の規定にそって進めることになりますが、会社が独自のルールを主張してくることもあります。日程を調整する必要があるなら、交渉のできる労働組合型か弁護士型を選ぶことになります。
有給の残日数がわからない
年次有給休暇は、勤続期間と出勤率の要件を満たせば法律上当然に発生します。契約書がなくても権利は生じますが、日数の管理がされていないと会社と食い違いが起きやすくなります。
未払い賃金が生じている
労働時間の記録が残っていない職場では、残業代の未払いが生じていることがあります。請求を検討する場合は弁護士が対応するサービスを選ぶ必要があります。判断は個別の事情で分かれるため、金額が大きいときは労働基準監督署や弁護士など専門の窓口に確認してください。就業規則との関係は就業規則の退職ルールについての記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
雇用契約書がないのは違法ですか?
雇用契約書という書面の作成自体は法律上の義務ではありません。ただし労働基準法により、賃金や労働時間などの労働条件を明示することは義務づけられています。何も示されていないのであれば、会社の対応に問題がある可能性があります。
口約束だけで働いていても退職代行は使えますか?
使えます。給与明細やタイムカードなど、雇用の実態を示す資料があれば依頼を進められます。何も手元にない場合は、依頼するサービスに事情を伝えて相談してください。
契約書がないと有給は取れませんか?
取れます。年次有給休暇は法律で定められた権利であり、勤続期間と出勤率の要件を満たせば契約書の有無にかかわらず発生します。ただし日数の主張が食い違う場合、話し合いが必要になることがあります。
まとめ
雇用契約書がなくても、働いている事実がある以上、雇用契約は成立しており、退職代行の利用にも支障はありません。大切なのは、給与明細や勤務記録など雇用の実態を示す資料を手元に揃えておくことです。そのうえで、退職日の調整や未払い賃金の請求といった論点があるかどうかで、選ぶべき退職代行の型が決まります。争点がなければ意思を伝えるだけのサービスで足り、話し合いが必要なら交渉のできる型を選んでください。

