退職代行に申し込むと「あとは全部やってもらえる」と考えがちですが、実際には自分の手で用意しなければならない書類があります。その代表が退職届です。退職代行はあなたの退職の意思を会社へ確実に伝えてくれますが、書面そのものを本人に代わって作成し、署名することはできません。この記事では、退職代行を使う場合に退職届が必要になる理由、書き方の具体例、いつどうやって会社へ送るのか、そして出さなかった場合にどうなるのかまでを順番に整理します。はじめて退職代行を検討している方でも、読み終える頃には当日の動きがイメージできるはずです。
退職代行を使っても退職届は自分で用意するのが基本
退職代行が担うのは「本人が辞める意思を持っている」という事実を会社へ伝え、その後のやりとりを本人に代わって引き受けることです。一方で退職届は、退職者本人の意思表示を書面として残すためのものなので、本人の名前と手による署名が前提になります。そのため多くの退職代行では、申し込み後に「退職届をご自身で用意して、指定のタイミングで郵送してください」と案内されます。
なお、法律上は退職の意思表示は口頭でも成立するとされており、退職届がなければ辞められないというわけではありません。それでも書面を残しておくと、あとから「聞いていない」「言った言わない」の争いになったときに、意思表示をした事実と日付を示す材料になります。手間としては十数分で終わる作業なので、基本的には用意しておくことをおすすめします。
退職代行が本人に代わって書くことはできない
退職届は本人の意思表示を示す文書であるため、代行業者が本人名義で作成・署名すると文書の信頼性が損なわれます。会社側から「本人の意思か確認できない」と指摘され、かえって手続きが長引く原因にもなりかねません。テンプレートの提供や書き方のアドバイスまでは多くの業者が対応してくれますが、記入と署名は必ず自分で行うものと考えてください。
退職願・退職届・辞表はどう違う?
退職願は「辞めさせてください」とお願いする書面で、会社が承諾するまでは撤回の余地が残ります。退職届は「辞めます」と一方的に通告する書面で、提出後の撤回は原則としてできません。辞表は役員や公務員が使う言い方なので、一般の会社員には関係ありません。退職代行を使う場面では、意思をはっきり示して手続きを前に進めたいので、退職届を選ぶのが一般的です。
退職届の書き方|手書きでもパソコンでもよい
書式に法律上の決まりはありません。白い便箋や無地のコピー用紙に手書きしても、パソコンで作成して印刷しても有効です。ただし署名だけは自筆にしておくと、本人が書いたことがわかりやすくなります。用紙はA4かB5、封筒は中身が透けない白無地を選び、表に「退職届」、裏に部署名と氏名を書いて封をします。
書き込む項目は5つだけ
必要なのは、冒頭の「退職届」という表題、書き出しの「私事」、退職理由と退職日を記した本文、提出日、所属部署と氏名、そして宛名となる会社名と代表者名です。文面は「私事、このたび一身上の都合により、令和○年○月○日をもって退職いたします。」の一行で十分です。長々と事情を説明する必要はありませんし、書けば書くほど引き止めの材料になることもあります。
退職理由は「一身上の都合により」で問題ない
職場への不満やハラスメントが理由であっても、退職届の理由欄は「一身上の都合により」で構いません。会社と争う可能性がある場合、感情的な記述はかえって不利に働くことがあります。未払い残業代の請求やハラスメントの責任追及を考えているなら、その主張は退職届ではなく、別のルートで専門家を通じて行うほうが安全です。
退職日は何月何日と書けばいい?
退職日は自分で勝手に決めるのではなく、退職代行の担当者と相談してから記入します。民法では期間の定めのない雇用について、申し入れから二週間の経過で契約が終了すると定められているため、有給休暇が残っていればその二週間を有給消化にあてて出社せずに退職日を迎えるという組み立てがよく使われます。有給が足りない場合は欠勤扱いになることもあるので、残日数を先に確認しておきましょう。日付が確定する前に退職届を書いてしまうと書き直しになるため、記入は連絡を受けたあとで構いません。
退職届はいつ・どうやって会社に送る?
送るタイミングは代行業者の指示を待つ
よくある失敗が、申し込みと同時に自分で退職届を投函してしまうことです。代行業者が会社へ連絡する前に書面だけが届くと、会社から本人へ直接電話がかかってきて、結局自分で対応する羽目になります。退職代行の多くは、担当者が会社へ第一報を入れて窓口を代行に一本化したあとで「では退職届を郵送してください」と案内します。この順番を守るだけで、会社からの直接連絡をかなり減らせます。
郵送方法は記録が残るものを選ぶ
普通郵便でも届きますが、届いた証拠が残りません。追跡できる特定記録郵便か、受け取りの記録まで残る簡易書留を使うと安心です。会社と対立している、あるいは書類を受け取っていないと言われそうな状況であれば、内容証明郵便という選択肢もあります。送り先は人事部宛が基本ですが、小さな会社なら代表者宛でも構いません。控えとして、封をする前に退職届をスマートフォンで撮影しておくと、あとで内容を確認できます。
貸与品や他の書類と一緒に送ってよい
社員証や健康保険証、制服などの返却物がある場合は、退職届と同封して一度に送ってしまうと手間が省けます。ただし保険証は返却のタイミングを間違えると受診に困ることがあるため、退職日以降に送るなど、担当者に確認してから動くほうが確実です。会社に置いたままの私物がある場合は、着払いで送ってもらえるよう代行経由で依頼しておきましょう。
退職届を出さないとどうなる?
退職の意思表示自体は代行業者からの連絡で成立しているので、退職届を出さなかったからといって退職が無効になるわけではありません。実務上も、会社が退職を受け入れて手続きを進めれば、書面なしで完了するケースはあります。
ただしリスクはあります。会社が「本人から退職の申し出を受けていない」と主張し、無断欠勤扱いのまま在籍を続けさせようとする例、離職票の発行が遅れる例、離職理由を会社側の都合のよいように記載される例などです。書面が一枚あるだけで、いつ誰がどんな意思表示をしたかが客観的に残ります。会社の対応が読めないときほど、退職届を出しておく意味は大きくなります。
退職代行のタイプ別|退職届まわりで頼れる範囲
退職代行は運営主体によってできることが異なります。民間企業が運営するタイプは、退職の意思を伝える連絡役が中心です。退職届のひな形を渡したり、送り方を案内したりはできますが、退職日や有給消化の条件を会社と交渉することはできません。会社が「退職日は三か月後にしてほしい」と主張してきた場合、そのまま伝言することしかできない点は理解しておく必要があります。
労働組合が運営するタイプは、団体交渉権にもとづいて退職日や有給消化について会社と話し合うことができます。退職届に書く退職日を有給消化後に設定したい、といった調整を任せられるのが強みです。弁護士が運営するタイプは、交渉に加えて未払い賃金や損害賠償請求といった法律問題まで扱えます。費用は高くなりますが、会社とトラブルになる可能性が高い場合には選択肢に入ります。自分の状況で「伝えるだけで足りるのか」「交渉が必要か」を基準に選ぶとよいでしょう。
なお、退職届の郵送案内まで料金に含まれるかはサービスによって異なります。各社の料金と対応範囲は安い退職代行おすすめ比較のページで比較できるので、申し込み前に確認しておくと安心です。
よくある質問
退職届は代行業者に送ればいいですか?
原則として会社へ直接郵送します。業者が預かって転送する運用のところもあるので、申し込み後の案内に従ってください。自己判断で送り先を変えると手続きが止まる原因になります。
会社所定の様式で出すよう求められました。従うべきですか?
所定様式の使用を義務づける法律はないため、自作の退職届でも効力に問題はありません。ただし社内手続きを円滑にする目的で求められているだけのこともあるので、様式を郵送してもらえるなら応じても差し支えありません。取りに来るよう言われた場合は、出社せずに済むよう代行経由で郵送を依頼しましょう。
退職届を出したあとに気が変わったら撤回できますか?
退職届は一方的な通告なので、会社に到達したあとの撤回は原則できません。会社が同意すれば取り消せる場合もありますが、期待はしないほうが無難です。迷いが残っているなら、体調不良が理由であればまず休職という選択肢もあります。心身の不調が背景にあるときは、退職を決める前に医療機関や、お住まいの自治体の相談窓口に一度話をしてみてください。判断できる状態を取り戻してから決めても遅くはありません。
まとめ
退職代行を使う場合でも、退職届は自分で用意するのが基本です。書式は自由で、書く内容は「一身上の都合により、○月○日をもって退職いたします」の一行で足ります。大切なのは中身よりタイミングで、代行業者が会社へ第一報を入れたあとに、追跡できる方法で郵送すること。この順番さえ守れば、会社と直接やりとりせずに手続きを終えられる可能性が高まります。退職日や有給消化の条件を会社と詰める必要がありそうなら、労働組合型や弁護士型を選ぶなど、自分の状況に合ったサービスを選んでください。

